クオリア qualia
感覚の中にあふれる質感、それをクオリアと呼ぶ。
冷たい水を張った洗面器にそっと両手を沈める。
雨の匂いがする夜道を歩く。
犬の耳を触る。
観葉植物の小さな新芽を見つける。
目を瞑り、眠りに落ちるまで暗闇を見つめる。
私はその無限に広がる空間にゆっくりと体を委ね、 しっとりとしたやわらかな感触を受け止めてみる。 その瞬間、すべてがすとん、と落ちていき、私のズレが中心に戻されるのだ。 それは同時に、日々の生活の中で蓋をしてきた記憶を呼び起こし、 その思いがけない突然の再会に、私は少しだけ泣く。
どんな言葉にも置き換えることのできない、たおやかで繊細、 そして切実な感覚を私たちはわずかな空間の中にでさえ認識している。 ただ、多くの人はそれを無駄なことと感じ、中心をずらしたまま歩き続けている。 私は制作の過程でその感覚を再認識しながら、 人々が作品の中に人それぞれのクオリアに出会えることを望んでいる。
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